ナポレオンと靖国参拝問題
本日は終戦記念日です。
なので政治問題、あるいは思想問題に関するブログについて書いてみようかと思います。
これもトレンドキーワードを狙った一種のブログテクニックといえるのではないでしょうか。
そもそも靖国問題とは?
今年も当然の如く、靖国神社の参拝が問題となっております。
「侵略者を英雄視するな」
「戦争犯罪を美化するな」
これが靖国神社の参拝に反対する人の意見です。
一方、
これが靖国神社の参拝に賛成する人の意見です。
ナポレオンと戦争犯罪の定義
いわゆる「A級戦犯問題」を語る上で知っておかなければならないは、その「罪状」です。
「侵略者だから」
「犯罪者だから」
単純にそう考えてしまうのは偏見です。あるいはメディアによる一方的な偏向報道といえます。
この問題の本質的なところは、靖国神社に祭られている英霊が善人か悪人かというものではありません。
「誰が善悪の基準を決めるのか?」
「誰が彼等を裁くのか?」
ということです。
この事例として非常に分かり易いのがフランスにおけるナポレオンの処遇でしょう。
彼は1815年、ワーテルローの戦いに敗れると英国軍に身柄を拘束されます。余談ですが敗戦直後、アメリカに逃れる予定だったのですがこれは失敗に終わりました。
ナポレオンのヨーロッパにおける評価がどのようなものかといいますと、フランスは除いて他の国では「侵略者」の扱いです。
とりわけイタリア遠征においては、多くの美術品等を蒐集して本国に持ち帰った事から、イタリア国内においては現在でも彼の評判は悪く「略奪者」「泥棒」といった評価がなされています。
そして、その「侵略者」が英国軍に捕まったわけですが、英国の対応はどういったものでしょうか?
「当然、死刑だろ」
「犯罪者が無罪のはずはない」
そのように考える方も少なくないかもしれません。しかし結果は、
身柄をセントヘレナ島に移される
英国軍の監視下で軟禁状態
生涯、フランスに帰国は許されなかった
第三国の亡命を申請したが、英国政府に却下された
いわゆる「島流し」の状態です。ちなみに彼の罪状はといいますと、
「なし」
なのです。実際には流刑のような形になっておりますが、英国の法廷でそのような判決が下されたのではなく。彼の立場は「流罪人」ではなく「客人」という扱いです。
実際近年の研究でも、島内における生活環境が独房のような狭い閉鎖空間のようなものではない。逆に広い屋敷に加え贅沢な食事、かつ移動の自由もかなり認められていたことが明らかになっています。
ナポレオンは何故、死刑にならなかったか?
これに対し、このような疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
「何故死刑にならないのか?」
「せめて牢獄に繋いでおくべきでは?」
前述のとおり、彼の罪状は存在しません。したがって死刑も投獄も出来ないわけです。
理由はといいますと、
英国政府が勝手にフランスの指導者を処刑したら外交問題になる
フランス皇帝を裁く権利があるのはあくまでもフランス政府であり、そしてフランス国民です。ちなみに、ナポレオンの部下であった元帥の内、何人かは実際にフランス国内の裁判によって死刑判決を受けております。そして実際に処刑もされています。
しかし、これはあくまでフランス政府による判断であって、イギリス政府にそのような権限はありません。
フランス国内の判断は?
では、フランス国民(議会)は皇帝の死刑を要求していたかというと、そうではありません。
だとすれば、彼を無罪とし、身柄を本国へ引き渡すよう求めていたのかというと…これもありませんでした。理由は簡単で、
「現政権はナポレオンを指導者として認めない」
もし彼が帰国すれば、再び政権を奪取して現政権を脅かすかも知れない。そのような危険因子を受け入れる事は困難と判断し、当のフランス政府は彼の身柄引き渡しを「拒否」したわけです。
罪状なし。ただし帰国も亡命も不可
そうなると、一つの選択肢に「第三国への亡命」というものがあります。実際に彼自身、ワーテルローの戦いに敗れた直後は米国へ亡命する予定でした。
実際に亡命申請も出されたのですが…英国政府はこれを認めませんでした。理由はアメリカでフランス国内外の支持者と結託し、再起をされると厄介だと判断したからでしょう。
※余談ですが、フランス革命で革命軍の指揮をとったラファイエットは革命後、ジャコバン派が台頭すると命を狙われるようになり、アメリカに亡命しています。
即ち、
英国政府はナポレオンの処遇を独断で決められない
フランス政府はナポレオンの死刑を望んでいない
フランス政府はナポレオンの身柄引き渡しを要求していない
その結果、
英国政府がナポレオンの身柄を預かる
かといってロンドンで軟禁生活をさせていれば、いずれフランスの支持者が彼を連れ出してしまう事にもなりかねません。
これはフランス政府も望まない結果であるばかりでもなく、イギリス国内でも反政府的な立場の人間に彼が利用される危険性があったわけです。
したがって、英国の中心部に彼が存在するのはフランスにとってもイギリスにとっても、両国にとって「邪魔な存在」となる…
結果、イギリス政府がとった措置が、
両国から遙か離れた場所で軟禁する
その場所として選ばれたのがセントヘレナ島というわけです。
「戦犯」を裁くのは誰か?
ちなみに、日本の「戦犯」と呼ばれている人達が全員無罪かというと、必ずしもそうとは限りません。
実際に(事後法ではなく)当時の基準で有罪とされるならば、そのような裁きを受けた可能性はあります。ただし、
日本人を裁くのはあくまで日本政府及び日本国民
です。そもそも、彼等が戦犯であるかどうかを決める権限は日本政府や日本国民にあります。米国を中心とした連合国側に彼等を裁く権限は本来、存在しません。
もし仮に、日本政府及び日本国民が戦争中の指導者に対し、「彼等は犯罪者」「彼等は死刑が妥当」というのであれば、それによって裁くこと自体は可能でしょう。
不当でも「実力行使」は不可能ではない
繰り返し申し上げますが、
外国政府または指導者に、その権限はない
のです。
にもかかわらず、何故そのような事が実行されたかといいますと、
外交問題になる可能性がないと判断されたから
です。東京裁判は基本的に「戦勝国にとって都合の悪い人物」が裁かれました。しかし、
占領下の日本においては、それに対して報復措置をとることが出来なかった
敗戦で国力を失った日本は、相手からの突きつけられた内容が不当だとして、戦争を再開するという方法は出来ませんでした。したがって、そのような不当行為を「受け入れざるを得なかった」というわけです。
ちなみに前述のナポレオンの場合、もし英国政府が彼を処刑した場合、これを不服とするフランスと戦争が再開される可能性は十分にありました。
それは英国政府はもちろんのこと、ナポレオン戦争によって国が疲弊していたフランス、さらにはヨーロッパ全体がそれを望んでいなかった。即ち、
両国の利害関係が一致した
という話です。
これに対し、第二次世界大戦後の日本と米国の場合、米国は東京裁判の結果が不服だとして日本と戦争になっても戦争を継続できる能力がありました。
一方、日本にはこれ以上戦争を継続できる能力がなかった。即ち、
両国の利害関係は一致していなかった
のです。
軍人は「英霊扱い」が基本
ナポレオンは1821年、セントヘレナ島で亡くなりました。
その遺体は同地で埋葬されたのですが、1840年にフランス国王の意向により、遺体はフランス本国に返還されています。そしてパリにあるアンヴァリッドのドーム教会(オテル・デ・ザンヴァリッド)に祀られています。
ここではナポレオンの他、軍人や政治家となった彼の家族に加え、他の著名な軍人も祀られております。即ちナポレオンの、現在における立場は「英霊扱い」です。
最初に申し上げましたとおり、ナポレオンはヨーロッパの一部において非常に評判の悪い地域が存在します。
しかし、かといって遺体の祭祀をやめるよう外国から要求されることはないですし、またそれに応じるという動きもありません。
そもそもテロリストを祀る方が問題なのでは?
これを書くと批判が集中するかもしれないのですがアクセス稼ぎのため敢えて書いておきます。
韓国では「安重根の墓」というのがあり、そこに大統領が参拝しています。
「国の英雄を慰霊するのは当たり前でしょうが」
「それは日本の靖国参拝と同じでは?」
そのように考える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、安重根は軍人ではなくテロリストです。
近年、有名なテロリストとしてオサマ・ビンラディンが存在します。
彼はアメリカ軍との戦いで命を落とすのですが、その死後、彼の遺体の処置を巡って大きな問題が起こりました。
実際に行われたのは水葬という方式ですが、これはイスラム教における正式な埋葬方法ではないため、一イスラム教徒としての彼に対して敬意を欠く行為なのではないかというものです。
むろん、それはアメリカ政府も理解していたでしょう。にもかかわらず何故、そのような方法がとられたのかといいますと、
火葬や土葬は埋葬地が特定される可能性がある
埋葬地が「英雄の墓」として「聖地化」され、新たなテロを誘発しかねない
なお、一イスラム教徒の墓が聖地として崇められるのは、イスラム教における「偶像崇拝の禁止」と抵触する可能性があります。この辺はイスラム教という宗教に特有の問題といえるでしょう。
即ち、テロリストという立場である以上、そこにどれほどの支持があったとしても「公式の慰霊行為」は基本的に認められない。これは「国際上のルール」です。
だとすれば、テロリストである安重根の慰霊行為を行うのは当然ですが「国際ルールに違反」することになります。何故なら彼は正規の軍人ではなく、単なるテロリストだからです。
なぜ、毎年靖国問題が起きるのか?
にもかかわらず、日本のメディアは何故かこれを報道しないですよね。それどころか、このような指摘をした場合に対して、
「侵略戦争を認めず、話題を逸らそうとしている」
このように言われるのかもしれません。私は別に侵略戦争が云々ではなく「国際ルール上、そうなっている」と事実を指摘しているだけですが…
しかし、反対者に言わせるとそれは「国際ルール」ではなく「軍国主義者の思い込み」だそうです。
そもそも、この靖国問題は何故解決しないのか?個人的な考えとしては、戦後の日本人。とりわけ知識人に多く見られた、
「日本の常識は世界の非常識」論
即ち、日本の常識は大日本帝国に強要された「日本国内でしか通用しない常識」であり、それを否定する外国の意見は「世界の正しい常識」という考えです。
例えば中国や韓国が靖国問題を批判すると、それは他の国も全て否定していると思い込んでいた…
したがって「世界の常識を受け入れよう」ということが素晴らしい事と考えているわけです。
加えて、そういう人達の多くが「高学歴者」「インテリ」であったため、いわば上級国民思想ともいうべき思想として定着していった経緯があります。
「日本人は知らない、世界の常識というものが存在するのだ」
「戦前の日本は自国に都合の悪い情報を隠ぺいしてきたが、知識人には通用しない」
「我々知識人が、日本に都合の悪い「世界の常識」を無知な日本の大衆に啓蒙してやるのだ」
その結果、
日本に対する肯定的な評価は「国が意図的に発信したもの」
日本に対する否定的な評価は「国が従来は隠蔽していたもの」
即ち、日本に対する否定的な意見を発信することが「世界的な視野で見た、正しい情報を伝える事に他ならない」と考えるようになったわけです。
しかし近年のインターネットの発達により、日本の世界からの評価は否定的なものよりも肯定的な方が圧倒的に多い事が伝えられています。
むろん、日本に対する否定的な評価も存在します。しかし、それを以て「だから日本人はダメ」という発想は世界的な視点を以て物事を見ているどころか逆に、
狭い視野で自国の粗探しに明け暮れている
日本国内における反日の正体とは?
もし仮に「世界的な視野で見た、正しい情報を伝える」というのであれば、自国はもちろんのこと、他国の悪い点も指摘しなければなりません。結果、
「結局に日本の方が優れている」
「実は、この国が日本より優れている」
どちらの可能性もあることを指摘する必要があります。しかし、どういうわけか日本の良い点は指摘しない…
彼等の目的が何かというと、
自分達が特別な存在であると、日本人に対して主張したいだけ
実は、彼等は世界の事なんか全然見ていないのです。その「世界からの日本批判」というのも結局、
「同じ日本人に対してマウンティングをしたいだけでは?」
変な例えかもしれませんが、会社の上司が「お客様のため」といいつつ、実は自分が出世したいがために社長に媚びへつらっている。そして部下にパワハラを行っているようなイメージです。
「俺はお客様の為に頑張ってるんだ!」
「お前にお客様の気持ちが分かるか!」
会社にしてみれば有害な存在は上司でしょうか?それとも部下でしょうか?
当然ですが上司の方に問題がある。しかし往々にして人間というものは「他人のためという「正義」をちらつかされると反論しにくい」。そして何より、
自分に媚びへつらってくる人間に弱い
のです。
結果、部下に対して「上司の指示に従わない悪い奴」と思い込むようになる。そして、客観的には会社にとって有害な人材を徴用するようになります。
問題は、これによって「お客様は得をしない」ということです。お客様のために頑張っている、というのはあくまで「上司の社長に対するアピール」に過ぎません。
当のお客様が何の恩恵も受けていない。それどころか、自分達が特定の人物の出世の道具として使われている…
この「お客様」を「世界」と置き換えた場合、どうでしょうか?結局、日本をとにかく批判しまくる、いわゆる「知識人」と言われる人々の言っている内容、そしてその目的が分かって来るのではないでしょうか?